教授 野津 伸治

1.教育に対する責任

私は本学において情報系の教育を担当している。その中でも「情報処理実務」「ネットワークの基礎」「プログラミング」「ウェブプログラミング演習」の分野を中心に教育している。また、情報処理はソフトウェアとハードウェアの融合する形で行われているのでそのバランスも配慮しつつ、また近年求められているSTEM教育やAI(深層学習)等を基礎から教育することも心掛けている。

学校法人藤田学院ホームページ「教員紹介2023」

2.教育の理念

私は、本学の教育活動において、以下の3点を重視している。

1) 先端技術も基礎理論の積み上げで構成されており、最も基本的なことから確実に理解をすること
目先の流行に流されることなく、その技術の本質的な意味について考えてみることは技術者はもとより、このような社会で暮らす一般市民としても持っていて欲しいと態度である。
2) 実践的に応用できるスキルを身に着けること
知識を持っていることは有用であるがさらに実社会で応用できることで物事は変わっていくと考える。
3) 情報技術の社会生活に及ぼす影響や責務を認識すること
社会の変革に資する技術や社会での必要性を常に考えつつ、その当事者としての責任も果たしていって欲しいと考えている。

3.教育の方法

上述の教育理念を達成するため、例えば1年次前期必修科目である「情報処理実務」では、次のような授業を行っている。
本科目は、情報処理の対象のコンピュータはハードウェアとソフトウェアの統合で初めて機能を果たす。そこで統合の一つの例とAIロボットのAIによる動作を例にグループPBLとして学習させている。ロボットを物理的に動かす駆動回路の原理を説明したのちその一部分をソフトウェアに置き換えることでの利点を説明する。従来型プログラミングではセンサー情報をプログラマーが判断して駆動機構を制御する。一方AI型プログラミングでは様々な状況をデータで与えてAI自身が判断基準を獲得していく。AIプログラミングの3ステップ:学習データ収集、ニューラルネットワークの学習、実環境への展開を実習することで様々な概念が融合して動作することが理解できるようにしている。
また、1年次前期選択科目である「ネットワークの基礎」では、ネットワークの動作の基本技術、様々なサービスの基本原理、実践的なサーバーセキュリティ対策を教えている。日常的に学生たちが利用しているInternetはどのような原理で動き、安心・安全に利用し続けられるようにしている。学内のネットワークを毎日利用していることからそれを学習題材に利用している。
いずれも、教育DXとしての小学校から高校までのGIGAスクール構想との接続性と社会で求められているニーズを踏まえるようにしている。2022年度から高校での教育課程の大幅変更も「情報」に関する高校教科書も熟読して対応している。

鳥取短期大学ポータルサイト「シラバス検索」

4.学生による授業評価

2021年度の授業評価アンケート結果について、いくつかの例を示す。
1年次前期必修科目である「情報処理実務」(満足:36.4% やや満足:61.4%)や1年次前期選択科目である「ネットワークの基礎」(満足:11.4% やや満足:63.6%)、2年次前期選択科目である「プログラミング」(満足:24.0% やや満足:52.0%)に対する総合的な満足度は履修者の76~98%からポジティブな評価を得ているが、2年次後期選択科目である「ウェブプログラミング」のような2年間の集大成の能力(Web、データベース、プログラミング)を強く要する科目においては、年度により評価が変化する傾向がある。

5.教育改善への取り組み

学内で開催されるFD/SD研修には欠かさず出席している。また、授業見学についても時間的に可能な限り参加している。
授業においては、上述した理念を達成するため、抽象的な概念や見ることができない状況の可能な限り可視化した授業資料の作成に力を注いでいる。これらの理解を確認するために15回の授業では5回目ごとの計3回の小テストを実施して理解度を確認しながら進めている。

6.今後の目標

1) 短期的な目標
  1. 学科内にて継続的に科目間連携を検討し続けること
  2. 学生の意思表明の機会を増やすことを対面でもJamboardやFormsなどのツールを利用して理解を深めさせること
2) 中・長期的な目標
  1. 学習内容の重要部分は可視化と説明文の精緻化を継続・拡充させていくこと(最新の理論や技術について)
    理論の生まれた背景や実社会での利活用の意義も常に考えさせること。
  2. 地域と連携した授業の設計を継続していくこと
    2022年度から、鳥取県内企業の課題解決にITを利用して貢献できる人材育成プログラムを率いている。委託契約元の鳥取県商工労働部やフィールドとしての県内企業、学科内の教員のプログラムとのかかわりに、教育内容を毎週議論しながら進めている。
    鳥取県や県内市町村の審議委員等で得た地域の現状や技術相談に乗った企業のメタ情報も守秘義務をおさえたうえで情報処理の前提やニーズという意味で授業の枠組みで利用している。
最終更新:令和4(2022)年7月14日

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